環境・資源・エネルギー問題
板ガラス製造業の低炭素社会実行計画・フォローアップ結果報告
板硝子協会は、京都議定書の採択に先立つ1997年6月に(一社)日本経済団体連合会により策定されたCO2削減に対する取り組みとしての「環境自主行動計画」及び2013年1月に策定された「低炭素社会実行計画」に参画、以降毎年度そのフォローアップを報告書としてまとめ、第三者評価委員会にて評価を受けています。
CO2削減の数値目標に関しては、2014年度以降目標値である115万トンを継続してクリアしたことから、基準年度を1990年から2005年に変更して目標水準の見直しを行ないました。
- 国内の事業活動における2020年度の削減目標
- 削減目標:2020年目標値<CO2総量目標>
- 100.1万トン-CO2(2005年比▲25.5%)とする。(※)
(※参加企業3社の製品である建築用、自動車用、ディスプレイ用の板ガラスを製造する際に発生するCO2を対象)
●当該年度実績報告
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- (1) 2017年度実績
- (2) 2017年度実績の背景
- CO2排出量の実績値は、2005年度134.3万t-CO2、2009年度までは2007年度以降の需要の落ち込みが回復しなかったことや、溶解窯の定期修繕による稼動窯の減少により110万t-CO2に減少した。2010年度以降は住宅エコポイント制度や震災及びその後の復興などの市場の需要変動に伴う生産量の変動を受け排出量も増減している。2017年度排出量は108.7万t-CO2と、2005年度比19.1%減となった。
●目標達成のためのこれまでの取組み
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- 板ガラス製造設備(溶解窯)の廃棄、集約化による生産効率化
- 溶解窯の定期修繕(冷修)による熱回収効率の改善
- 1窯当たりの製品品種替えロス、色替えロス減少のための販売品種の集約化
- エネルギー効率の高い新燃焼技術等の技術開発と導入
- 設備運転条件の改善 など
- 主体間連携の強化
- ●削減ポテンシャル
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板硝子協会として拡販を進めているエコガラス(次世代省エネ基準を満たすLow-E複層ガラス)のLCAを行ない、2010年に第三者機関によるクリティカルレビューを受けた。
単板ガラスを使用した窓ガラスをベースとし、標準的なLow-E複層ガラスを使用した窓ガラスをモデルとして、原材料調達、生産、加工・組立、輸送、使用、破棄の工程で地球温暖化ガス排出量、酸性雨原因ガス排出量の算出・比較を行った。
エコガラス製造時の地球温暖化ガス排出量の増加分は、そのエコガラスを住宅に設置したことによる冷暖房負荷低減に伴う地球温暖化ガス削減効果により1~2年で回収でき、35年間の製品寿命(住宅の平均寿命)を考慮すると、エコガラスが地球温暖化防止に貢献できることが判明した。 - ●低炭素製品・サービス等を通じた貢献
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2017年度の新設住宅への複層ガラスの戸数普及率の推定値は、戸数普及率で戸建97.3%、共同住宅70.5%となり、住宅窓の断熱性向上によるCO2排出量の削減効果は、252千t-CO2/年が見込まれている。
既築のオフィスビル等は、その窓ガラスをLow-E複層ガラスなどのエコガラスに変えることで省エネに寄与することが期待されていたが、足場工事等が必要でコストが高く、戸建住宅に比べそのエコリフォームが進んでいなかった。その需要に応えるために、ビル外壁に対する足場等不要なエコリフォームが可能な製品を開発し、市場に提供している。 - ●国民運動に繋がる取組み
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省エネ効果の高いLow-E複層ガラスの普及を図るために、「エコガラス」という共通呼称を採用し、一般消費者に対してエコガラスの使用を通じたCO2削減と地球温暖化防止を呼びかけるキャンペーン活動を2006年4月より展開している。
具体的な活動内容としては、以下の通りである。- 展示機材に触れて省エネ効果を体感する目的で、一般消費者を対象としたイベント会場への移動体感車「ガラスの森号」の派遣や学校の環境教育のための機材の貸し出し
- 一般消費者が住宅のCO2排出削減量や暖冷房費用削減額をホームページの画面から検索できるエコガラスシュミレーターの公開
- 「エコガラス」ロゴマークの制定
- 専用ウエブサイトを開設しメールマガジンの配信
- 新聞・雑誌、ケーブルテレビ等への広告及びパブリシテイ活動
- 省エネ設備導入補助金及び高性能建材導入補助金事業への普及促進活動
- 建材トップランナー制度、省エネ住宅ポイントへの参画
- ●森林吸収源の育成・保全に関する取組み
- 間伐材の有効利用を促進することを目的とした「森の町内会」の活動に積極的に参加する事で森林吸収源の育成・保全に寄与している。又、熱帯雨林保護活動として、系列海外工場から国内工場及び系列海外工場間の製品搬送用One-way木箱をリターナブルスチールパレットに転換している。
- 国際貢献の推進
- ●削減ポテンシャル
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日本国内で開発した生産プロセスの省CO2技術を海外の拠点に適用することにより、地球規模でのCO2削減に取り組んでいる。
一例としては、25%程度の省CO2が期待される全酸素燃焼技術などの技術を中国及び欧州に導入した事例がある。
- 革新的技術の開発
- ●削減ポテンシャル
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溶解窯の更新による熱回収の効率化や、窯の統廃合等による生産の集約を図る一方、10年以上に渡って窯を継続使用する製造方法の関係上、経年劣化は避けられないため、燃焼技術の改善及び設備改善によるエネルギーロスを最小限に抑えるための企業努力の継続実施により、エネルギー効率の悪化に歯止めをかけている。
近年、燃焼効率の向上を目的として、加盟各社の溶解窯に使われる燃焼用バーナーにおいて、部分的に酸素燃焼を用いるなどの新技術による対策も実施している。 - ●今後実施予定の取組み
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実用化には継続した開発が必要だが、「全酸素燃焼技術」「気中溶解技術」などの抜本的な省CO2溶融技術の開発は各社で進めている。
※事業概要
- (全酸素燃焼技術)
- 燃料燃焼時に空気の代わりに酸素を使用し、空気中の燃焼に寄与せずNOxの原因となる窒素(空気中の約8割を占める)を燃焼温度まで上昇させるための顕熱をカットすることで、大幅にCO2排出量を削減する技術。比較的大きなガラス溶解槽窯に適した特殊な構造のバーナー等の燃焼技術が必要とされる。
- (気中溶解技術)
- 気中溶解技術は、最高で10,000℃にも達するプラズマ燃焼炎や酸素燃焼炎を使って、顆粒状のガラス原料を空気中で溶解する技術。溶解プロセスを瞬時に完了させ、また溶解槽のサイズも大幅に縮小することができる技術。
- その他
- ●再生可能エネルギーの活用に関する取組み
- 一部会員会社の本社オフィスビルは、その電力を再生可能エネルギーの「生グリーン電力」でまかなっているが、一助として既存のLow-E複層ガラス窓に、後付追加Low-Eガラスを施工し既存窓ガラスの3層化を図る等の対策を施している。一部生産工場においても太陽光発電を採用している。
- 建物・自動車などの安全