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規格基準

板硝子協会推奨基準

部分スパンドレル及び下がり壁部のガラスの熱割れ計算について

2023 年4 月19 日
一般社団法人 板硝子協会

従来、スパンドレル部のガラスの熱割れは,図1に示すように「ビジョン部」と「スパンドレル部」で面ガラスが分割された状態(以後;普通スパンドレルと称す)を基に、計算式を設定して熱割れ検討を実施しております。
一方、近年では面ガラスが「ビジョン部」と「スパンドレル部分」に分割されずに、フロアー~フロアー間の大きさで使用され、図2に示すように「面ガラスを天井高さで仕切ったケース(以後;部分スパンドレルと称す)」や図3に示しめすように「天井材で面ガラスを仕切らずに、室内側上部に一定の空間を持たせたケース(以後;下がり壁と称す)」が散見され、個々の条件下で熱割れ検討を行うケースも増えつつあります。部分スパンドレルと下り壁の場合の懸案事項を以下に示します。


  • (1) 部分スパンドレル
    面ガラスの「スパンドレル部」と「ビジョン部」でガラス温度が異なり,普通スパンドレル部と比較し、熱応力が増大することが懸念されます。

  • (2) 下がり壁
    外装ガラスの室内側上部の「空間」部位は,部分スパンドレル部と異なり,室内空気が流入するため,部分スパンドレル部と比較し、面ガラスの熱応力は緩和されると考えられます。

    図1 普通スパンドレル


そこで,板硝子協会では,有限要素法による熱伝導解析,熱流体解析及び構造解析により,種々の断面形状の部分スパンドレル部及び下がり壁部のガラス温度分布と熱応力を求め,普通スパンドレル部の熱応力と比較した場合の「部分スパンドレル部」と「下がり壁」の場合の熱応力増加係数を整理しました。
部分スパンドレル及び下がり壁の、熱割れ計算として添付の報告書を『板硝子協会推奨条件』とさせて頂きます。


  • 部分スパンドレルガラスの熱割れ計算について
    スパンドレル部とビジョン部のガラスが一体となった特殊なスパンドレル部(部分スパンドレルと呼ぶ)の場合,スパンドレルボードの日射吸収と熱抵抗によりスパンドレル部のガラスの温度は,ビジョン部のガラス温度よりも上昇する。このとき,スパンドレル部とビジョン部でガラスが一体となっているため,これらの境界付近でガラス面内の温度分布が急激となり,熱応力が増大すると推測される。そこで,種々のガラス及びスパンドレルボードの構成について有限要素法による熱伝導解析を行い,ガラス面内温度分布を求め,さらに構造解析によりガラスエッジ部に発生する熱応力を求めたところ,この熱応力は,同じ環境条件下の普通スパンドレル部の熱応力に対して1.29~1.36倍となることが分かった。
    この熱応力増加は,ガラス面内の温度分布によるものであり,従来の熱割れ検討における影による熱応力増加と同様の現象である。「影係数」は,影なしの条件での熱応力に対して,シングルシャドー条件での熱応力が1.3倍であることから,部分スパンドレルによる熱応力増加はシングルシャドーに相当すると考えた。そこで,部分スパンドレルの熱応力増加係数を影形状に応じて表1のとおりとし,部分スパンドレル面積について普通スパンドレルとして求めたガラス熱応力にこの係数を乗じて,部分スパンドレルのガラス熱応力を求めることとする。ただし、影形状がパラレルシャドー、シャープ影の場合はガラス面内温度分布の影響をかなり大きく考慮しているので、部分スパンドレル部でも影係数は1.7と据え置くこととする。
    表1に普通スパンドレルと部分スパンドレルの影係数を示す。

    表1 普通スパンドレルと部分スパンドレルの影係数
    影形状 普通スパンドレル 部分スパンドレル
    なし 1.0 1.3
    シングルシャドー 1.3 1.6
    クロスシャドー 1.6 1.7
    パラレルシャドー 1.7 1.7
    シャープ影 1.7 1.7
  • 下がり壁部ガラスの熱割れ計算について
    外装ガラスの室内側上部にくぼみを設けて壁と天井が下りている部位を,ここで下がり壁と呼ぶ。下がり壁部のガラスの熱割れ検討では,下がり壁部の影響のないビジョン部の熱応力とも,下がり壁部が密閉されているスパンドレル部の熱応力とも異なる,下がり壁部の熱応力を見積もる必要がある。しかし,室外から日射を受けるとき,ガラスと下がり壁に挟まれた下がり壁空間は熱溜まりとなるが,その空間下部が開放されているため室内空気との換気もあり,その換気効果は下がり壁部の高さと幅によって異なると考えられ,下がり壁空間とそれに接するガラスの温度分布は複雑となる。そこで,種々の断面形状の下がり壁部の温度分布を熱流体解析によって求め,ガラスの温度分布からガラスエッジに発生する熱応力を構造解析によって求め,これらの結果を整理することで下がり壁部の断面形状を変数とした下がり壁部の熱応力の算出方法をまとめた。下がり壁部のガラスの熱応力の計算は以下の手順で行うこととする。

    図4 下がり壁部の形状

    図2	下がり壁部の形状

    • 1)ビジョン部面積Avに対してビジョン部としての熱応力σvを求める。
    • 2)下がり壁部のガラス面積Asに対して下がり壁を密閉されたスパンドレル部とみなした熱応力σsを求める。
    • 3)下がり壁の断面形状の縦横比から熱応力増加係数gを求める。
      下がり壁の断面形状の縦横比から熱応力増加係数gを求めた計算

      図5 下がり壁断面形状の縦横比と熱応力増加係数の関係

      下がり壁断面形状の縦横比と熱応力増加係数の関係

      表2 下がり壁部の熱応力増加係数
      下がり壁断面形状の縦横比β 熱応力増加係数g
      0.1 0.359
      0.2 0.501
      0.3 0.606
      0.4 0.690
      0.5 0.761
      0.6 0.821
      0.7 0.874
      0.8 0.920
      0.9 0.960
      1.0 0.996
      1.2 1.054
      1.4 1.097
      1.6 1.127
      1.8 1.144
      2.0 1.150
    • 4)下がり壁部の熱応力σを次式によって求める。
      下がり壁部の熱応力σを次式

      なお,複層ガラスの場合には室内外ガラスともにこの計算手順を適用する。

参考資料:

  • 1) 部分スパンドレル熱割れ検討まとめ,板硝子協会 規格委員会SC2WG2,N0662, 2020/2/27
  • 2) 下がり壁の熱割れ検討報告資料,板硝子協会 規格委員会SC2WG2, N0778, 2022/9/26

以上

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